セラピストにむけた情報発信



褒めることの運動学習効果:Sugawara et al. 2012




2013年2月4日

昔から「人は褒めると成長する」といわれます.最近,褒めることで運動の学習.記憶向上するという報告がなされました.この報告はマスコミでも頻繁に取り上げられたため,ご存知の方も多いかもしれません.

Sugawara S et al. Social rewards enhance offline improvements in motor skill. Plos One 7, e48174, 2012

実験参加者は,30秒間の中でキーボードのキーを決められた順にできるだけたくさん押すということが求められました.

3つの参加者グループのうち第1のグループでは,練習終了後に自分のパフォーマンスが他者からポジティブに評価されていることが伝えられました.第2のグループではそうした評価が別の参加者になされていることが伝えられました.第3のグループでは評価の操作は行いませんでした.

練習の翌日に実施した保持テストの成績を,練習終了直前の成績からの伸び率という観点で評価したところ,第1のグループの成績の伸び率が優位に高いことが分かりました.

さらにこの研究では,練習をしていない新規な順番でのキー押しや,ただでたらめにキー押しをする場合の成績を評価したところ,グループ間の差が見られないことを確認しました.

このでたらめなキー押しに関する結果,マスコミ報道ではほとんど取り上げられていませんが,結果の全体的な解釈をするうえで大変重要な意味を持ちます.もし新規なパターンへの転移やでたらめなキー押しの成績も合わせて向上したとすれば,褒められることの効果は単に全般的なモチベーションが上がったことを意味したかもしれません.つまり,保持テストの成績の伸び率にのみ第1のグループの効果が確認できたことをもって,褒められることの効果は,運動学習に寄与したのだろうと解釈できるわけです.

このPlos Oneという雑誌はオープンアクセスの雑誌ですので,どなたでも論文がダウンロードできます.より詳細を知りたい方は,原典を読んでみてはいかがでしょうか.

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